A SUSTAINABLE LIFESTYLE 2023/06/19

#03 BLAISE PLANT|MONKEY MAJIK ボーカル&ギター

A SUSTAINABLE LIFESTYLE
電気自動車に乗って、興味深い生き方をしている人たちに会いにいく。
西へ東へ、それぞれのサステナブルライフ



MONKEY MAJIK ボーカル&ギター/BLAISE PLANT

ブレイズ・プラント カナダ・オンタリオ州オタワ生まれ。宮城県在住。ロックバンドMONKEY MAJIKのボーカル&ギター。俳優としても活躍。「Plant Vineyards」 www.plantvineyards.com/



都市と自然を回遊する





 5月、新緑が眩しい仙台へ、ボルボの電気自動車XC40で旅をした。


 大きく伸びたケヤキの並木が、若葉の回廊を作る定禅寺通。イチョウ並木が、3本の川のように伸びていく愛宕上杉通。XC40のセージグリーンのボディが、杜の都に映える。


 目的地は、街の中心から30分ほど西へ走った秋保だ。仙台をベースに活躍する人気バンド、MONKEY MAJIK のフロントマン、ブレイズ・プラントが営む「Plant Vineyards(プラント・ヴィンヤード)」がある。


 仙台は百万都市だが、車で30分も走れば里山が広がり、海へと至る。都市と自然を気軽に回遊できるその生活環境は、スウェーデンのストックホルム、ヨーテボリとも重なる。いずれも国際空港のある北欧の都市だが、車で少し走れば、豊かな自然が広がるのだ。スウェーデン人が大切にするワークライフバランスを保つ上で、都市と自然が隣り合うこと、緑豊かな街のデザインは欠かせない。仙台にもそれらがある。サステナブルな生き方を実践しようと、仙台へ移住してくる人も多いという。


 ボルボは2030年までに、発売する全新車を電気自動車に、さらに2040年には事業全体でのクライメート・ニュートラルを実現しようとしている。スウェーデンへ幾度も旅をしていると、ボルボが掲げるその目標は当然と思える。自然豊かな生活環境を、自分が乗る車の排気ガスで汚したくないという感情が湧き起こるからだ。電気自動車を選ぶのは、自然保護に1票を投じるのと同じだ、という考え方もある。


 地球規模で今、人間が持続可能な暮らしを営んでいくための選択が迫られている。





持続可能なマイクロ・ワイナリー



詳しくはインスタグラムで @plantvineyards



 温泉地として有名な秋保で、ブレイズ・プラントはブドウを育て、ワインを造っている。今年で5シーズン目になる。


「ワインメイカーというより、ファーマーだよ」とブレイズは、額に汗の粒を光らせながら言う。笑顔。彼にとってこれは、楽しい日々の営みだということがわかる。この日も朝早くからブレイズは、妻と2人、ブドウの芽かき作業に忙しい。


 ブレイズは自ら、草木がぼうぼう、石や岩がごろごろ、ずっと昔に切られた木が土の中に埋まったまま、というような荒れた土地を開墾し、ブドウ畑に造り替えた。


「ここは全部手造り。すべてゼロからやった。『みんなのゴミが俺の宝物』というのが、このワイナリーのコンセプトなんだ。リユース、リサイクルのものだけで造っているんだよ。自然由来で、みんなが使わなくなったもの、捨てるものを、俺がもらう。トラックに乗せて運び入れ、さぁこれで何を造ろう、何になるかなって考える。たとえばこれ」と言ってブレイズが指し示したのは、足下の草地にステップのように敷かれた、長さ1メートル、幅20センチほどの古びた木片。数十センチおきに同じ形の木片が埋められている。歩きやすいし、見た目にもきれいだ。


「これは、廃線の枕木。防腐剤が使われているからむやみに捨てられない。それで枕木ロードを造ってみた。この鉄のゲートも、ある場所で不要になったものをもらってきて、ここに取り付けた。この土地で最初からあるのは、あの大きな樹だけ。桜だよ。ここに初めて来た時、あの桜の樹を見て、パワースポットだと思った。だから、あの桜の樹を中心にして、サステナブルで小さなワイン農園を造ろうって考えたんだ」


 ブドウを育て、ワインを造ることは、仕事でも趣味でもなく、「ライフワークだ」とブレイズは語る。これは、ずっと昔からの自分のドリームだという。


「ワイン造りは若い頃からの夢だった。カナダの実家の近くにワイン農園があった。俺は十代の頃からワイン造りの本を読み、知識を蓄えてきた。種からブドウの木が伸びて実がなって、それを収穫してワインを造るという工程に、強い興味を持っていた。いつか、自分がおじいちゃんになったら、ワイン造りをしようって考えながら生きてきた」


 おじいちゃんになるよりずっと早く、その夢は現実になった。


 きっかけは毛利親房との出会いだ。毛利は、2015年にオープンした「秋保ワイナリー」の創業者、オーナーである。仙台の秋保にワイナリーが誕生する! 当時その一報に驚き、興奮した市民が大勢いたという。


 2017年の夏前に、MONKEY MAJIK の日本全国ツアーが無事終わり、仙台に帰ったブレイズは、少しリラックスしようと秋保温泉へクルマを走らせた。


「ところがその日は月曜日で、入ろうと思っていた日帰り温泉が定休日。がっかりさ。その時、近くにワイナリーが出来たという話を思い出して行ってみたんだ。そこで初めて毛利さんと会った。ブドウ畑を見せてもらい、造っているワインの話を聞いていたら、もういても立ってもいられなくなった。ちょうどツアーが終わって明日から暇だから、手伝いに来たい、って彼に言ったんだ」


 どうやら毛利は、ブレイズが本当に手伝いに来るとは思っていなかったらしい。だが、翌朝ブレイズは、朝7時過ぎには秋保ワイナリーに一人で行った。


「少ししたら毛利さんが現れて、あれ、本当に来たんだ!ってびっくりした顔だったよ」


 そこから毎週通って、ブドウ畑の手伝いに励んだという。


「秋の収穫まで手伝おう、もし途中で嫌になったら、自分にワイン造りはできないだろうと考えた。ところが、ずっと面白くて仕方ない。本を読んでワインのことは知っているつもりだったけれど、実際にブドウの木に触れると随分違う。頭でわかっていたことが、リアルに身体に入って、いろんな気づきや学びがある。めちゃくちゃ楽しい、もっとやりたい。翌年も手伝わせてもらうことにして、今度は土地の一部を遣わせてもらい、自分のブドウ(ピノ・グリ)を百本ほど植えたんだ」


 そうしてまた秋が来て、ブドウを収穫した時、「やっぱり土地を持って、自分のワイン農園をやりたい」と強く感じたという。


「2018年に秋保ワイナリーで手伝って育てたメルローと、山形や山梨のメルローをブレンドして自分のファーストワインを2千本造ったんだ。とても美味しく出来たよ。そして2021年に、自分の畑で初めてブドウを収穫し、ドメーヌワイン400本を造った。最初のワインよりさらに美味しく出来たね。今年は1千本、来年は1500本、2025年は2~3千本、それぞれ造ろうと考えている。ビジネスにしたかったら1万本必要だけど、これはライフワークであって仕事じゃないから、そんなに作るつもりはない。基本は、俺がひとりでマネージできること。今では俺よりワインに詳しい妻がいるから、仕事は半分になっているけれどね。仲間や友人が手伝ってくれるし、ボランティアで来てくれる人たちもいる。ワインができたらここでバーベキューしながら、みんなでたっぷりワインを飲む。その楽しみ、喜びのためにやっているんだ。ビジネスじゃない。それが、サステナブルなマイクロ・ワイナリーの良さなんだよ」



カントリーロードのドライブ



VOLVO XC40 RECHARGE PURE ECTRIC 車両本体価格¥6,790,000~



 夕方、「すごく気持ちいいところがあるからドライブしよう」とブレイズが言い、自らXC40を運転して連れていってくれたのが、秋保大滝。


 初夏のような青空が広がる午後で、気温はぐんぐん上昇し、光が燦々と射し、里山を駆ける素晴らしいカントリーロード・ドライブになった。「加速がすごいね!」とブレイズは、真っ直ぐ伸びた田舎道でアクセルを踏み込むと、驚いたように言った。「音もなくいっきにスピードが上がる。電気自動車って面白いね」


 窓を開け、流れる音楽に合わせて歌ううち、曲の構想が生まれたらしく、後部座席に座るマネジャーに「これ、録って」と言って、スマートフォンに録音してもらいながら、数分間、曲のフレーズをいくつも歌い続けた。こうやって歌が生まれることもあるのかとびっくりだ。


 秋保大滝とその渓谷、周囲の森は、とても美しい場所だった。


「カナダのナイアガラ・フォールズに負けていないよね」とブレイズは笑って言った。


「この滝は特別。森の雰囲気も最高でしょ。ここに来ると、パワーをもらえるんだ」


 帰りもブレイズは、歌いながら運転した。


「実にスムースで、カンファタブルな車だね。とても運転しやすい。スポーツ感もある。大好きだな、このクルマ。俺、これ買うよ、きっと」



「SWITCH VOL.41 NO.7から転載」



PHOTOGRAPHY: TAKAGI MASAYA TEXT: IMAI EIICHI