「捨てる」と「使う」をつなぐ仕組みをつくる 2022/03/17

#05 中台澄之さん|株式会社ナカダイ 代表取締役



さまざまな出会いや気づきから、「好きなこと」「伝えたいこと」その熱意を原動力にして、自分のスタイルで発信する「人」にフォーカスします。それぞれのサステナブルへつながる、発想や取り組みを紹介します。



株式会社ナカダイ 代表取締役/中台澄之(なかだい すみゆき)

1972年生まれ。東京理科大学理学部卒業後、証券会社勤務を経て、1999年に父親が社長を務めるナカダイに入社し、2018年社長に就任。総合リサイクル業としてリサイクル率99%を実現し、廃棄物を活かし、つないで、再度循環させる「リマーケティングビジネス」を確立する。2013年には、経済産業省の「グッドデザイン特別賞 未来づくりデザイン賞」を受賞。ナカダイで培った分別・解体の技術やノウハウから、“発想はモノから生まれる”をコンセプトに株式会社モノファクトリーを創設し、同社社長も務める。著書に『捨て方をデザインする循環ビジネス』(誠文堂新光社)など。



廃棄物の量から質への転換



不要と判断されたモノは、そのまま捨てればただのゴミだ。中台澄之さんは、その“捨て方”をデザインし、リユースやリサイクルなどを通してモノの最大価値を提案している。自ら名乗る肩書きは「ビジネスアーティスト」だ。

中台さんが社長を務める株式会社ナカダイは、鉄を中心としたスクラップ業として1937年に創業した、老舗の廃棄物処理業者だ。しかし、祖父、父と受け継がれてきた会社を、「当初は全く継ぐ気はなかった」と中台さんは語る。大学卒業後は証券会社に入社し、営業マンとして日々忙しく働いていた。転機が訪れたのは1990年代後半、気候変動への国際的な取り組みである京都議定書が採択された頃だ。

「京都議定書の合意で世間の環境問題への意識が高まったこともあり、父はナカダイをスクラップ業から総合リサイクル業へと変えようとしていました。ちょうどその頃、私も京都支店に勤めていて、国際会議のために海外から大勢の人が訪れる様子を目の当たりにしたんです。『環境問題は世界でこれほど多くの注目を集めているのか』と驚くと同時に、リサイクル業の可能性に対して興味がわきました」

こうしてナカダイに入社した後は、営業手腕を発揮し、それまで数百万円程度だったリサイクル業の売上を、短期間で数億円規模にまで成長させた。一方、順調な業績とは裏腹に、中台さんの頭には「このままリサイクルだけやっていてよいのか」という思いが浮かぶようになる。

「回収した廃棄物を従来のリサイクルの流れに乗せるだけでは、私たちの仕事はどこまでいっても“ゴミ集め”です。環境にとっても、お客様である企業にとっても、ゴミが減るのは喜ばしいことです。しかし、ゴミが減れば減るほど、リサイクル業者である我々の売上は下がってしまいます。その矛盾を打開するには、廃棄物の量から質へと転換を図るべきだと考えました」





捨て方をデザインし、「廃棄物=ゴミ」の価値観を変えたい



廃棄物の質とは、言い換えるなら「素材としての魅力」ということだ。その付加価値を高めるために中台さんが取り組んだのが、それまで以上に細かい材料レベルでの分別だった。

一口に鉄スクラップと言っても、純粋なスチールや塗装されたもの、プラスチックが混在したものなど、さまざまな状態がある。例えば、素材としての価値は純粋な鉄が最も高い。プラスチックゴミも同様で、ポリエチレンやポリプロピレンといったところまで分別できれば、リサイクル素材としての価値は非常に高くなるという。

「とは言え、このように細かく分けようとすると、従来通りの分別方法では困難です。家庭の台所を思い浮かべると分かりやすいのですが、生ゴミやビニール袋や紙などが全部一緒に捨てられたゴミ箱から中身を分別するのは、嫌だし大変ですよね。でも、野菜くずやプラスチックなど種類ごとに捨てるゴミ箱を決めておき、料理をしながら決まった場所にその都度ゴミを捨てていけば、手間なく簡単に分別ができます。産業廃棄物もそれと同じ。まとめて捨てられた廃棄物から一つひとつの素材を分けるのは難しくても、製造過程で捨てる場所と捨てるモノが決まっていれば、材料レベルの分別は容易なんです」

そのためにナカダイが重視しているのが、製品の生産者である顧客とのコミュニケーションだ。各企業の生産の仕組みを知り、どの工程でどんな廃棄物が出るのかを把握した上で、製造現場に捨てる場所を設けて捨て方をマネジメントする。なぜ分別が必要なのか、分別した廃棄物がどのような資源になるのかを丁寧に伝えることで、顧客側の意識も大きく変わるのだという。中台さんはこれを「捨て方のデザイン」と呼ぶ。



グループ会社の株式会社モノファクトリーとともに同グループの取り組みや取引企業の先進事例の紹介、勉強会などを行うイベント「産廃サミット」を例年実施している。廃棄物処理工場や中古品リユースのオークション市場の見学、全国の廃棄物の一元管理を行うリマーケティングセンターの見学、トークショーなど、現場を回りながらサーキュラーエコノミーについて考える法人向けの体験型イベント。



「捨て方をデザインすることで、廃棄物は単なるゴミではなく、立派な資源になります。廃棄物処理業者の仕事も、ゴミの分別ではなく再生資源の生産というクリエイティブなものになる。廃棄物処理業界全体の地位向上のためにも、『廃棄物=ゴミ』という価値観を変えることが非常に重要なんです。質の良い再生資源がまとまって安定的に入ってくれば、それを買ってくれる企業は必ず存在します。現在ナカダイでは、1日あたり約60トンの廃棄物を継続して受け入れ、リサイクル率99%を実現しています」



近い将来訪れる「モノが自由に捨てられない時代」



中国で資源ゴミの輸入が禁止されて以降、東南アジア諸国でも廃プラスチックの輸入規制が進んでいる。これまで海外に資源ゴミを買ってもらうことで形式的なリサイクルを行っていた企業は、その処理先がなくなってしまった。これまで長い間輸出され続けてきた大量の廃棄物は行き場を失い、国内に滞留しはじめているという。

「現在私たちは、自由にモノを買い、自由に捨てています。でも近い将来、モノが自由に捨てられない時代が来るかもしれません。もし皆さんが『月に45リットルの袋1つ分しかゴミを出してはいけません』と言われたらどうでしょうか。おそらく、買物の仕方が大きく変わるはずです。捨て方の分からないモノは買わないでしょうし、同じような商品なら『使い終わったら回収します』というメーカーの方を選ぶでしょう。そうなると、生産者である企業も、不要になった製品を自社の責任で回収する仕組みをつくらないと、消費者に選ばれなくなってしまうんです」

モノを生み出すことに関しては、製造から流通、販売、消費までの枠組がしっかりと確立されている。それに加えて、消費した後、モノを廃棄するところまでの枠組を構築していくことが重要だと中台さんは語る。2011年には、廃棄物の新たな使い方を創造する空間として「モノ:ファクトリー」を設立した。



モノ:ファクトリーに設置されたマテリアルライブラリーでは、廃棄物として捨てられたモノが展示され、現物に触れながらその情報を知ることができる。廃棄物を用いたワークショップや、工場見学なども実施。



「再生資源としての活用のしやすさを考えれば、モノのつくり方もおのずと変わってくるでしょう。モノ:ファクトリーでは、モノを生み出してから捨てるまでの全ての過程を結び、捨てられたモノの資源としての使い方、素材として新しい可能性を提案することで、廃棄物という素材を通した新しいビジネスの創出を行いました。このニーズが非常に高まったことと、環境、循環への社会の関心の変化から、ビジネスとして展開するために法人化し、循環の仕組みづくりのコンサルティングを行う会社として再スタートしました。私たちが担うのは、循環のプラットフォーム構築に向けた、情報提供の“ハブ”の役割。つくり手である企業と共に、廃棄物を再度循環させるためのネットワークをつくっていきたいと考えています」



消費を楽しみながら目指す理想の循環型社会



「モノが自由に捨てられない時代」が到来すれば、企業だけではなく、消費者も商品選択や捨て方を問われることになる。目指すべき循環型社会の姿を見据え、中台さんは「日本には結構ポテンシャルがあると思いますよ」と語る。

「日本では、家庭ゴミを出すときにも、ビン、缶、ペットボトル、段ボール、といったように資源ゴミを分けていますよね。それはつまり、分別して回収する習慣が根付いているということ。あとは生産する側がしっかりと回収の仕組みをつくることができれば、比較的スムーズに循環のサイクルが成り立つのではないでしょうか。例えばどこか広大な土地で、世界各国が集まって循環型のまちづくりを競うコンテストがあったとしたら、きっと日本は勝てると思うんです。日本には、それだけの技術とポテンシャルがあります。今は残念ながら、企業同士の連携がうまくとれていない部分がありますが、情報提供によってそこをしっかりつなげることも、私たち廃棄物処理業者の大切な務めです。そうして確立した日本式の循環システムを、まだモノの捨て方が整備されていない海外の国や地域に持っていけたらいいですよね。きっとビジネスとしても大きなチャンスになると思います」

環境問題について考えるとき、モノを捨てることは悪いことだと捉えられがちだ。しかし中台さんは、「捨てることもつくることも決して悪ではない」と言う。





「環境に配慮することはもちろん大切ですが、人生において消費を楽しむこともとても大切です。モノを買ってはいけない、使ってはいけない、捨ててはいけないといった萎縮した状態では、健全な社会とはいえません。車が好きでドライブもするけれど、できるだけ環境に配慮された車を選ぶ、というように、無理に我慢しない状態で消費を楽しむことは必要だと思うんです。そうやって楽しみながら、結果的に環境負荷が減っていれば、それが理想の形といえるのではないでしょうか。

同時に、消費にも、価格が高い安いだけではない別の切り口が加わるといいですよね。食品を買うときに『どこでどうやってつくられたか』にこだわって選ぶように、モノにも『このプラスチックはリサイクル材でこの工場でつくられた』などの情報が付いていれば、きっと選ぶ楽しさが増えるはずです。そうやって消費者を楽しませる策を、つくり手である企業に期待をしています。そのためのお手伝いをこれからも続けていきたいですね」