みんなが見たいのは、ワクワクする未来。[後編] 2022/06/30

岩元美智彦(株式会社JEPLAN会長) × マーティン・パーソン #02

ボルボの新オフィスにて。



ボルボ・カー・ジャパン社長のマーティン・パーソンが、サステナブルな活動に取り組み、各界でイノベーションを起こしているリーダーたちを訪ねます。これまでにない捉え方やアイデア、技術で、社会的意義のある新たな価値を生み出し、社会にインパクトを与えている彼ら。サステナブルでイノベーティブな未来について、ともに語り合います。



株式会社JEPLAN 取締役 執行役員会長 岩元美智彦(いわもと みちひこ)

1964年鹿児島県生まれ。大学卒業後、繊維商社で繊維製品のリサイクルに深く携わる。2007年、研究者だった髙尾正樹現社長とともに、前身である日本環境設計株式会社を設立。翌年、綿繊維からバイオエタノールをつくる技術開発に成功。以後、資源が循環する社会づくりを目指し、技術開発だけでなく、業界の枠を越えて国内外の様々な企業と連携、サステナブルな社会形成のためのインフラの構築に取り組む。「正しいを楽しく」をモットーに、消費者の参加を促すユニークなプロジェクトも次々考案。2015年アショカ・フェローに選出。著書に『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。



前編では、画期的なリサイクル技術や、目指す循環型の社会とビジネスについてうかがいました。
後編では、日本とスウェーデンの消費者マインドの違いや、消費者を動かすアイデア、さらにはボルボとの新たなコラボレーションの可能性も飛び出します。



ワクワクが、人を動かす。



マーティン
もう一つ、スウェーデンと日本で大きな違いを感じるのは、消費者のマインドです。スウェーデンでは、サステナブルなプロダクトにはその分お金を払ってもいいと考えます。日本では少しでも安く、が普通でしょう。
岩元
そうです!




マーティン
例えば、スウェーデンのスーパーには、普通の牛乳の隣に、オーガニックの牛乳も並んでいます。値段はもちろん同じではありません。でも、どんな商品にも選択肢があります。その中から消費者自身が選択することができるわけです。
岩元
選択肢があるというのがいいですね。ちょっと高くても、それを選ぶ人がいるということですね。
マーティン
そう、だからビジネスになります。
日本の消費者の心を動かすにはどうしたらいいと思われますか。岩元さんはこれまで、お店の店頭に服やおもちゃを集める「回収ボックス」を置くなど、リサイクルの「しくみづくり」にも熱心に取り組んでこられましたね。
岩元
以前、消費者にどこでリサイクルしたいですか?と質問したら、買ったお店という回答でした。ならば、「買って→使って→リサイクル」ではなくて、「リサイクルしにお店に行って→買って→使う」という文化をつくろうと考えたのです。そのためには、誰にでもわかりやすく参加しやすいしくみが必要だと思いました。衣服の回収サービスについて、昨年は年間3万カ所以上で回収を行いました。
マーティン
消費者に行動を起こしてもらうために、ユニークなアイデアを次々実現されていますね。
岩元
ええ。「技術」と「しくみ」はできました。あとはみんなが楽しいと参加してくれれば、資源が循環する社会ができます。そこで、「楽しいこと」をみんなでやろうと考えました。 
最初は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するクルマ型のタイムマシン「デロリアン」を、集めた服からつくった燃料で実際に走らせました。
その次は、「みんなで飛行機を飛ばそう!」と、世界で初めてジェット燃料を古着でつくる製造ライセンスをとって、実際に飛行機を飛ばすことに成功しました。


映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するデロリアンを映画のゴミで動かす設定を再現。燃料は古着からつくったエタノール。(画像提供:株式会社JEPLAN)



マーティン
ワクワクするプロジェクトばかりですね。これらはつまり、行動に結びつけるためのインセンティブ(動機付け)ですね。スウェーデンでは、インセンティブはお金でした(笑)。専用のマシンにペットボトルを返すとレシートが出てきて、それを集めると、お店でまた何か買えるというのが、子どもの頃の楽しみでした。
岩元
日本ではそれができなかったので、「楽しい」に変えようと思ったのです。正しいは楽しい!にです。
マーティンさんがおっしゃるように、行動を起こすということが、やはりとても大事だと思います。それが子どもの頃から習慣になれば、やがてそれは文化になります。だから子どもたちへのプログラムをたくさん考えるわけです。
社会課題を真摯に受け入れる若い人たちの感覚が、日本の次のサステナビリティを支えていくのではないかと思っています。
マーティン
私たちも、そんな若い人たちのクルマへのハードルをできるだけ低くしようと、C40 Rechargeの導入ではサブスクリプションにトライしてみました。ボルボはこれから、「所有する」クルマから「所有しない」モビリティにシフトすることを考えています。ヨーロッパでは多くのブランドがやっていることですが、いずれ日本でも「カーシェアリング」や、自分のクルマを他の人に貸し出せるサービスなどを広げていくと面白いですね。できるだけ今ある資源を活用していかなければと思います。


みんなで一緒に、ボルボをつくろう!?



岩元
例えば、こういうアイデアはどうですか? 「みんなで要らない服を集めて、ボルボをつくろう!」。クルマ全部はできなくても、例えばフロアマットのような物であればすぐにつくれてしまいます。
やはり、消費者の心を動かすには、ストーリーと愛が不可欠だと思います。ただリサイクルしました、では面白くありません。集めたもので、何をつくるか……クルマというのは夢がある乗り物ですから、それに関わる物がいいですね!!
マーティン
それは面白いですね。
ボルボのディーラーは約100店舗あって、ほぼ日本全体をカバーしています。地域で、子どもたちの参加型というのもいいと思いますね。
岩元
そうですね。「みんなで」というのがいいですよね。やはり人を巻き込むことが大切です。楽しい体験から一人ひとりの意識が変わり、行動が変わっていくと思います。
マーティン
やはりサステナビリティは具体化、そして達成感が大切ですね。
岩元
そこです! デジタルの力で、誰が参加したかも製品にスマホをかざしてわかるといいですね。「自分が参加したからこんなことができたんだ」、という「見える化」が大事なところだと思います。
マーティン
良いアイデアですね!私もまさにそういうことをやりたかったのです(笑)。




岩元
一致しましたね(笑)。「BRING」の服では、生産履歴や流通履歴も追いかけたいと考えています。
服にピッとスマホをかざすと、これはリサイクル10回目で、50年前の素材が使われている……ということもわかるようになるといいなと考えていますが、これはケミカルリサイクル技術と、デジタルのしくみで叶えられるかもしれません。
僕は、これからの素材は、何回リサイクルしたかに価値があると思っています。そういう歴史を積み重ねることが、いわば「地球価値」だと考えます。そしてそれが、これからのブランドの新しい価値になると思っています。リサイクルによる地上資源だけでつくられたプロダクトがもっとたくさん出てくれば、あとは買うだけです。そうすれば経済が回り、CO₂の排出量も減って、平和につながります。
一度ぜひ僕たちの工場を見にいらしてください。最先端の電気自動車で、最先端のケミカルリサイクル工場へ。きっと人生観が変わると思いますよ。
マーティン
では、C40 Rechargeでぜひ(笑)。
今日はありがとうございました。ビジネスの視点からもいろいろなお話が聞けて、また、ボルボと重なる部分もあって、とても楽しかったです。


岩元さんのお話には、パイオニアならではのエナジーとパッションを感じました。長く真摯にリサイクルビジネスに取り組まれてきたチャレンジャーであり、しかも楽しくチャレンジしているところがすばらしいと思います。地域や子どもたちと一緒に、という発想もまた、ボルボが共感する部分です。これから一緒に何ができるか楽しみです。



聞き手:ボルボ・カー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 マーティン・パーソン

1971年スウェーデン生まれ。明治大学に1年間留学して経営学を学び、1999年ボルボ・カーズ・ジャパンに入社。約10年を日本で過ごす。その後、スウェーデン本社でグローバル顧客管理部門の責任者を務め、ロシア、中国などを経て、2020年10月、ボルボ・カー・ジャパンの社長に就任。12年ぶりの日本で楽しみにしているのは、温泉地巡り。日本の温泉は、旅館や料理などトータルに楽しめるのはもちろん、温泉地の豊かな自然が何よりの癒し。