「地上資源」のリサイクルで、平和な世界をつくりたい。[前編] 2022/06/23

岩元美智彦(株式会社JEPLAN会長) × マーティン・パーソン #01

ボルボの新オフィスで、岩元さんお気に入りの「地球環境防衛団」のポーズ。



ボルボ・カー・ジャパン社長のマーティン・パーソンが、サステナブルな活動に取り組み、各界でイノベーションを起こしているリーダーたちを訪ねます。これまでにない捉え方やアイデア、技術で、社会的意義のある新たな価値を生み出し、社会にインパクトを与えている彼ら。サステナブルでイノベーティブな未来について、ともに語り合います。



株式会社JEPLAN 取締役 執行役員会長 岩元美智彦(いわもと みちひこ)

1964年鹿児島県生まれ。大学卒業後、繊維商社で繊維製品のリサイクルに深く携わる。2007年、研究者だった髙尾正樹現社長とともに、前身である日本環境設計株式会社を設立。翌年、綿繊維からバイオエタノールをつくる技術開発に成功。以後、資源が循環する社会づくりを目指し、技術開発だけでなく、業界の枠を越えて国内外の様々な企業と連携、サステナブルな社会形成のためのインフラの構築に取り組む。「正しいを楽しく」をモットーに、消費者の参加を促すユニークなプロジェクトも次々考案。2015年アショカ・フェローに選出。著書に『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。



2007年にベンチャー企業「日本環境設計株式会社」としてスタートし、衣料をはじめとする様々なリサイクル事業を展開している「株式会社JEPLAN」。革新的な技術と、多くの企業を巻き込んでの「しくみづくり」、夢のあるアイデアで、リサイクルのイメージを次々と変えています。
今回は、創業者である会長の岩元美智彦さんを、ボルボ・カー・ジャパンの新オフィスにお招きし、循環型社会の実現に向けてともに語り合いました。



世界が驚いたケミカルリサイクル技術。



マーティン
ようこそ、お越しくださいました。
岩元
素敵なオフィスですね!
マーティン
ありがとうございます。
初めてお会いしたのは、昨年秋のスウェーデン大使館主催の「サステナビリティ サミット2021」でしたね。日本とスウェーデン、国境を超えて協力し合おうと、ビジネスリーダーや政府関係者が一堂に会した初のサミットでした。そこで岩元さんの会社の先進的な取り組みを知って、驚くと同時にうれしくなりました。それも15年も前から行動されているのですね。
岩元
そうです。実はスウェーデンとは以前からとても親密な関係があります。12~13年前にスウェーデン大使館から技術サポートをしてほしいということでスウェーデンに行って、現地の大学や企業などと情報交換をしました。当時みなさんが当たり前にサステナブルの考え方や真摯な取り組みをされていて「こういう国と一緒に世界の循環型社会をつくりたい」と思ったのが最初です。それがきっかけで、いち早くうちの「服から服をつくる」事業に賛同してくれたのが、スウェーデンのアパレルメーカー「H&M」でした。で、今回はボルボさんとの対談でしょう。とてもうれしく思っています。
ボルボはがっちりしたクルマをつくる、というイメージが僕にはあります。850エステートは、僕らが学生の頃の憧れのクルマでした。




マーティン
ありがとうございます。ボルボは、あそこで一気にテイクオフしました(笑)。
JEPLANさんは、ユニークなリサイクル事業を展開されていますね。
岩元
僕たちは、主に要らなくなった服やペットボトルから再度原料をつくり出して、それを改めて衣料やペットボトルに再生する事業を行っています。「衣料」「プラスチック」「携帯電話(金・銀・レアメタルなどの金属)」の3つを柱にしていて、クルマとの親和性も高いのではないかと思っています。
マーティン
ボルボの環境への取り組みも、さかのぼると1945年にギアボックスのリサイクルから始まりました。実は私もスウェーデン本社では、リサイクルの分野を担当していました。エンジンとかトランスミッションのリユース(再使用)、リマニュファクチャリング(使用済み製品の再生)ですね。完全な循環型ビジネスを目指しているボルボは、車両、部品、素材のすべてで資源効率を最大限に高めようと、リサイクルに力を注いでいます。
岩元
なるほど。安全性に加えて、さらにサステナビリティにも取り組んでおられるというわけですね。
マーティン
自動車メーカーにとって、持続可能な社会への本質的な解決策は、電気自動車へのシフトです。2021年11月には、ボルボ初の電気自動車C40を発表して、シートなどクルマの中もサステナブルな素材へ移行していくことを決めました。その一つが初のレザーフリーで、C40の内装はレザーの代わりに独自の新素材を使用しています。リサイクル素材で、ペットボトルからつくった高品質のテキスタイルです。
今後も素材のイノベーションは不可欠です。ですから、岩元さんたちの開発した「服から服をつくる」技術には非常に興味があります。そもそもケミカルリサイクル技術とは、どのようなものなのですか?
岩元
一般的なリサイクルは、ペットボトルであれば、粉砕・洗浄し、熱で溶かして再びペットボトルや服につくり替える「物理的なリサイクル」です。それに対して僕たちの技術は、「化学的なリサイクル」、モノではなく元素や分子を見ています。化学的な処理をして、ペットボトルを分子レベルまで戻して、新たに原料をつくります。物理的なリサイクルだと色や添加物がとれないので、使用用途に限度があり、ペットボトルへのリサイクルには再生回数にも限度があります。でも、化学的なリサイクルなら、色が付いていても劣化していても、石油からつくるのとまったく変わらない品質に戻すことができて、しかも何度でもリサイクルができます。


「ボトルからボトルをつくる」BRING TechnologyTMは不純物の除去という点に優れており、これによりペットボトル→ペットボトルという循環を何度でも繰り返すことができるようになる。(画像提供:株式会社JEPLAN)



マーティン
高品質で、しかも半永久的にリサイクルができるのですか。それはすごいですね。
岩元
そうすれば、ゴミとして捨てられていたものが新たな「地上資源」となり、石油という地下資源を新たな原料として使う必要がなくなります。地上資源だけでぐるぐる循環していけば、CO2の排出量も減っていくし、限りある地下資源を奪い合う戦争も減り、結果的に平和な社会になる、というわけです。


経済と環境を両立させる。



マーティン
でも、ビジネスとして成立させるのは、とても大変なことですね。
岩元
至難の業ですが、ペットボトルの水平リサイクルに係る世界最大規模のケミカルリサイクル工場がようやく動き出したところで、利益が出始めています。ここが大事なところですね(笑)。
マーティン
そう、そこがとても大事です。サステナブルがビジネスで成り立つものにしないといけません。チャリティではありませんから。特別なサポートは受けていないのですか?
岩元
はい、国からの補助金などは入っていません。やはり経済と環境がきちんと両立する平和な社会を実現させたい、これが僕たちのコンセプトです。
世界も、「本当にこんなことができるんだ!」と驚いてくれました。
すでに複数の引き合いが来ています。さらに、地上資源からできた自社ブランドのプロダクトも店頭に並び出したところです。
マーティン
ハチのマークのファッションブランド「BRING 」ですね。
岩元
ええ、これが本当に売れています。とくに若い人に人気です。
マーティン
私は、循環型社会を目指す上で大事なことは、言葉だけでなく、岩元さんのように具体的な行動を起こすことだと思います。
これまでボルボでは、アグレッシブな目標を設定して、それに向かって取り組んできました。例えば、「2030年には販売する新車を電気自動車100%にする」「2040年までに気候変動に影響を与えないクライメイト・ニュートラル(気候中立)な企業になる」。イノベーションを起こすために、あえてチャレンジングな目標をつくって、プレッシャーをかけるのです。そして、それをどうしたら達成できるか、みんなでアイデアを出し合います。
日本ではサステナブルという言葉はよく聞きますが、ただ流行りのバズワードになっているのでは……という気もします。




岩元
他社がやっているから、自分たちも同じようにしておこう……というような空気感が日本ではありますよね。
しかしH&Mは2017年に、2030年までに地下資源を使わずに「服から服をつくる」事をコミットしてくれました。「テクノロジーがあるからできるし、やるんだ」という姿勢です。そこがまったく違います。そのおかげで、いろいろなグローバル企業が賛同してくれて、日本の企業もやっと僕の話を聞いてくれるようになりました(笑)。最初に口火を切ってくれたのは、スウェーデン企業です。なにかそういうDNAがあるのでしょうね。
マーティン
あえて良いプレッシャーをかけることでイノベーションを起こしていくというのは、もしかしたらスウェーデンの文化かもしれません。



聞き手:ボルボ・カー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 マーティン・パーソン

1971年スウェーデン生まれ。明治大学に1年間留学して経営学を学び、1999年ボルボ・カーズ・ジャパンに入社。約10年を日本で過ごす。その後、スウェーデン本社でグローバル顧客管理部門の責任者を務め、ロシア、中国などを経て、2020年10月、ボルボ・カー・ジャパンの社長に就任。12年ぶりの日本で楽しみにしているのは、温泉地巡り。日本の温泉は、旅館や料理などトータルに楽しめるのはもちろん、温泉地の豊かな自然が何よりの癒し。