【住む】建てる時には建材の来歴を確認。コンポストで、家に環境循環を生みだそう。 2022/03/24

Let's start a sustainable life vol.2

Let's start a sustainable life
スウェーデンの事例を中心に、サステナビリティをよりわかりやすく伝える活動を続けている「One Planet Café」のエクベリご夫妻から、サステナブルライフを実践するための新しい視点やアイデア、モノの選び方を“まなぶ”。



東京・港区にあるエクベリ夫妻の自宅。サステナブルな一室にリフォームされている。



家を作るすべての素材について「どこから来たか」を知る



企業研修や講演、ツアー、バナナペーパー事業など、さまざまな切り口でサステナビリティを広げる活動を行なってきたエクベリ聡子さん、ペオ・エクベリさん夫妻。ペオさんはサステナブル先進国・スウェーデンの出身です。日本で活動する中で、「サステナブルを実現できるのは、スウェーデンだから。日本では難しい」という声を幾度となく耳にしてきました。

「日本でもサステナブルな暮らしを実現できる。自分自身の暮らしでそれを証明することも、私たちの大事な活動のひとつです。そこで、私たちの自宅をサステナブルでエコな一室にリフォームすることにしたのです」(ペオさん)



スウェーデンの知識と、日本の建材を掛け合わせてリフォーム。ペオさん曰く「スウェーデンと日本のハイブリッドなエコマンション」



リフォームするにあたり、エクベリ夫妻が徹底したのは、床・壁・ドア・窓など、使用する建材がどこから来たどんなものなのか、調べ尽くすということでした。

「ペンキの原料も、畳のい草も、どんな人たちによって、どんな動植物が育つ地域で生産されたものなのか。業者の方にお願いして調べてもらって、自分たちでも徹底的に調べました。生産地の自然に負荷をかけずに作られていることを確かめるためです」と聡子さんは当時を振り返ります。「天然素材」として売り込まれていたある建材は、調べてみると、森林破壊が進むロシアの森から来たもの、ということもあったと言います。

まず自然に還る素材であること、自然が再生できる以上のスピードで取られていないこと、生産時に生態系を破壊していないこと、リユースできる素材であること……こうした条件を満たす建材にこだわって選んだ結果、リフォームには約100種類の環境循環する建材が使われることになりました。

例えば、リビングの壁には漆喰や珪藻土を塗りました。漆喰は海藻から、珪藻土もプランクトンや珪藻殻の堆積物から生産される自然素材です。洗面所には、おがくずと古新聞から作られた壁紙を。これらの素材には、調湿性があり、カビが生えにくいというメリットもあるのだそうです。



FSC®など、環境ラベルの付いた建材も積極的に活用



FSC®認証の床材を貼ったフローリング。無垢材であたたかみのある空間に。



床板には、FSC®認証の無垢材が使われています。FSC®は、生産地の環境に負荷をかけず、適切に管理されて生産された木材であることを証明する環境ラベルです。ペオさんは、日本でもっと環境ラベルが活用されていくことを願っていると言います。

「環境ラベルは、サステナビリティにおける運転免許証のようなものです。免許を持っていないドライバーの車には、安心して乗れませんよね。環境ラベルは、基準を満たすことを第三者がチェックして保証しているということ。安心して選ぶことができます。スウェーデンでは、環境循環を保証するラベルや、商品のジャンル毎に設計されたラベルなど、100以上の環境ラベルが運用されています。家そのものがサステナビリティを保証する環境ラベルもあり、アパートやマンションの付加価値になっているんですよ」(ペオさん)

エクベリ夫妻の部屋には、サステナブルに暮らすための工夫も施されています。例えば、天井。窓からの自然光を部屋中に広げるために、白い漆喰を塗って天井にゆるやかなカーブを作りました。これにより、日中は照明器具に頼らなくても明るい部屋に。窓のサッシは木製かつ二重サッシにし、断熱性を高めて冷暖房効率を上げています。トイレも節水型に変更しました。

リフォームした部屋で暮らし始めたエクベリ夫妻は、実際に自分たちの暮らしで、どれくらいの環境負荷があるのか計測してみました。調べた結果、環境省が提示する一般世帯の数値(2008年度)と比べ、水使用量70%減、エネルギー使用量50%減という結果に。CO2排出量に至っては、リフォームした部屋の性能に、グリーン電力への切り替えと自分たちの省エネ行動が加わったことで、一般世帯に比べ90%減を達成したのだそうです。



コンポストは、暮らしの中で環境循環を感じられるすばらしい方法



エクベリ夫妻が家に設置している、ミミズコンポスト。一番上の層に生ゴミを入れると、ミミズが下層から移動し生ゴミを分解。一番下の層には栄養豊富な土が落ちていくしくみになっている。



家のリフォームはハードルが高い、という方にも、エクベリ夫妻は「コンポスト」を住まいに取り入れることをおすすめしています。近年は、インテリアとして楽しめるデザイン性の高いバッグ型やバケツ型が販売されていたり、自作できるダンボールコンポストの情報がインターネット上で公開されていたりと、選択肢が広がり、取り入れやすくなっています。

「私たちは、バルコニーにミミズコンポストを設置しています。コンポストがあることで、家で環境循環を回し、体験することができるようになります。これは分解できるだろうか?とモノを見る視点が変わっていくはずです。ゴミが驚くほど少なくなりますし、ゴミ出しのストレスが減るというメリットもありますよ」(ペオさん)

ペオさんは、生ゴミ以外にも色んなものをコンポストに入れてみることがあると言います。例えば、使った綿棒をコンポストへ。かつて、綿棒の芯が分解されず残っていたことでプラスチックが使われていたことに気づき、現在は芯も紙製のものを選択しています。

「自然分解すれば、ゴミはゴミではなくなります。今、世界中が頭を悩ませているのは、分解できないプラスティックゴミの問題です。コンポストを使うと、綿や紙は、数ヶ月で土に還ることがよくわかります。ぜひ、自分の家で、小さな環境循環を回してみてくださいね」(ペオさん)



監修:株式会社One Planet Caféエクベリ聡子さん、ペオ・エクベリさん

環境循環を基盤としサステナビリティに貢献するビジネスを生み出すことをミッションに、日本企業にむけた講演・ワークショップ、スウェーデンとザンビアでの視察ツアー、クライメートポジティブを達成したバナナペーパーの事業を展開。日本 、スウェーデン、ザンビアに拠点を持つ。2016年国際フェアトレード認証取得、2020年経済産業省作成のSDGsに取り組む企業事例15社の1社に。One Planet Caféの名前には、人と生きものが共存する一つの地球、地球1個分の暮らしとビジネスへという想いが込められている。