サステナブルライフの基本「環境循環」を学ぶ 2022/02/10

Let's start a sustainable life vol.1

スウェーデンのマルメ市にあるウエスタン・ハーバー地区は環境循環社会を推進している街。再生可能エネルギー100%を達成している。



スウェーデンの事例を中心に、サステナビリティをよりわかりやすく伝える活動を続けている「One Planet Café」のエクベリご夫妻から、サステナブルライフを実践するための新しい視点やアイディア、モノの選び方を学びます。



スウェーデンの人々は「環境に正しい」レシピを知っている



気候変動の危機が深刻さを増すなか、世界はサステナブル(持続可能)な社会へと変革を求められています。世界に先駆けて、サステナビリティを重視した社会・まちづくりを進め、リードしてきた国があります。VOLVOを生んだ国・スウェーデンです。

「株式会社One Planet Café」のペオ・エクベリさん、エクベリ聡子さん夫妻は、サステナビリティに関する企業コンサルティングや講演活動、スウェーデン視察ツアーを通じて、ペオさんの出身地であるスウェーデンの事例を日本に紹介してきました。エクベリご夫妻にお話をうかがい、私たちの暮らしをサステナブルにしていくためのアイディアやヒントを探していきます。
今回はまず、環境先進国・スウェーデンに浸透するサステナビリティのルールであり大前提となる「環境循環」という考え方をご紹介します。

「環境循環は、サステナビリティにおけるいわばレシピのようなものです。おいしい料理を作りたかったら、材料と分量、手順を記したレシピを知り、それを実行する必要があるでしょう?レシピさえ知っていれば、迷わずにサステナブルを実行できるようになりますよ」(ペオさん)



サステナビリティのレシピ、「環境循環」とは?



理想的な環境循環を表したのがこちらの図。人間は3Rを回しながら、生き物が回すサイクルに資源を返し(Return自然に返す)、「Recover自然が再生する」時間を稼ぐ。



ペオさんがサステナビリティのレシピと呼ぶ、「環境循環」とはどんなものなのでしょうか。自然界ではすべての動植物は有機的につながり、循環しています。例えば木々から出る落ち葉も、枯れた草花も、微生物が分解して土に還ります。動物たちの出す排泄物も、微生物が分解して栄養になるため、ゴミではなく資源です。動植物も呼吸によって二酸化炭素を出しますが、植物は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素に転換する仕組みを持っています。太陽からのエネルギーで植物が育ち、それを動物が食べ、排泄物も動物の死骸もやがて土に還ってまた資源になる。それが自然の循環です。

しかし私たち人間は、地下にある資源、石油や天然ガスなどの化石燃料を掘り出して地上で使い、ゴミを生み出し続けています。化石燃料には水や空気を汚す物質も含まれているので、さらに問題を引き起こします。つまり、化石燃料を次々に使ってゴミを出し続ける一方通行の社会(リニアソサエティ)を、なんとか循環させて持続可能にしていこうというのが、今、世界がめざしている環境循環型社会です。

「ここで大事になってくるのが、循環は2つあるということです。1つは、人間が回していくサイクルで、よく耳にする3R、リデュース・リユース・リサイクル(Reduce・Reuse・Recycle)のこと。人が技術を使って回すため、テクニカルサイクルとも呼ばれます。無駄を減らして再利用し、どうしても使えなくなったら再資源化して再び使うというサイクルですね。もうひとつ、その外側に、自然界が回している大きな循環、バイオサイクルがあります。ポイントは、人間の行うテクニカルサイクルは、資源として使った自然が回復するまでの時間を稼ぐために行っているということです」(聡子さん)

エクベリ夫妻は、近年よく言われる「サーキュラーエコノミー」という言葉について、日本ではバイオサイクルの視点が抜け落ちた文脈で使われていることに危機感を覚えています。リサイクルを続ければ、物質はいつか必ずボロボロになり、使えなくなる時がやってきます。その時、ちゃんと自然に戻る資源を使っているのか? 小さなサイクルの終わりが、大きな自然のサイクルに組み込まれていることが、持続可能な環境循環型社会の大前提になるのです。



今日から心がけたい、環境循環の3つのレシピ



スウェーデンでは、保育園児たちが地上と地下の原則を学ぶ。写真は、板にいろいろなゴミを打ちつけて土に埋め、分解される物質とされない物質を確かめる実験の様子。



最後に、エクベリ夫妻から、サステナブルな暮らしの原則となる環境循環3つのレシピを教えていただきました。

Recipe 1.地下から地上へ切り替えましょう
まずは、地下資源を極力減らすことが大切です。地下の資源は有限で、回復することが難しく、地上に持ってくることで自然界のバランスを崩してしまいます。掘り出した石炭を使う火力発電などの電気を供給する会社ではなく、地上に降り注ぐ太陽光で発電した再生可能エネルギーを供給する電力会社に切り替える。石油を原料とする化学繊維ではなくオーガニックの綿の服を着る。プラスチック容器のお弁当ではなく、紙で包まれたサンドイッチを選ぶ。こうした行動を積み重ねることが、サステナブルな暮らしをつくっていきます。

Recipe 2.使った分だけ返すこと、回復できない以上に取らないこと
人間が行う3Rの循環は、自然界の大きな循環が回っていくための時間を稼ぐために行っている循環です。自然界は、ある程度まで自分で回復できる能力(レジリエンス)を備えています。節度を守って資源を使い、最後は自然に戻していくことができれば、持続可能な社会を実現できます。また地上の資源であっても、森林減少につながる原料を使った紙や、皆伐して植えたパームヤシから搾るパーム油を使った商品は、回復できない負荷を自然に与えています。

Recipe3.生物多様性を保護すること
生き物は、大きな自然の循環を回していくための大事なエンジンです。多様な生き物がそれぞれの役割を果たすことで、活発に循環しています。生き物の住処を奪う開発を行わないこと、そうした開発によって生み出された商品は選択しないことが、生物多様性の保護につながります。

「サステナブルな暮らしは、決して難しいことではありません。自然の摂理であり、当たり前の話でもあります。環境に正しいレシピを知ったなら、あとは楽しみながら実践するだけですよ」とペオさんは笑顔で話します。次回は「住む」ことをテーマに、環境循環のレシピに沿ったサステナブルな住まいのつくり方、住み方をご紹介していきます。



監修:株式会社One Planet Caféエクベリ聡子さん、ペオ・エクベリさん

環境循環を基盤としサステナビリティに貢献するビジネスを生み出すことをミッションに、日本企業にむけた講演・ワークショップ、スウェーデンとザンビアでの視察ツアー、クライメートポジティブを実現したバナナペーパーの事業を展開。日本 、スウェーデン、ザンビアに拠点を持つ。2016年国際フェアトレード認証取得、2020年経済産業省作成のSDGsに取り組む企業事例15社の1社に。One Planet Caféの名前には、人と生きものが共存する一つの地球、地球1個分の暮らしとビジネスへという想いが込められている。