グリーン産業の形成と持続可能な都市計画 2021/10/14

Stories of Sustainability vol.5

子供でも簡単に利用できる自動化された真空ゴミ収集ステーション
クレジット:City of Stockholm/imagebank.sweden.se



スウェーデンなど北欧諸国をはじめ各国のサステナビリティな文化慣習や、取り組みをお伝えするのが「Stories of Sustainability」です。
未来を変えていくアクションやヒントをご紹介します。



電力消費量が多い国は世界で最もグリーンな国!?



スウェーデンは環境問題に対して世界をリードする国です。国民の意識も高く自然への敬意はいつも忘れません。これまでどの国々よりも早くに、環境を第一に考えた経済成長を進める政策を率先して実行してきました。しかし世界の電力消費量国別ランキングに目を向けると、経済発展にともなう1位の中国を筆頭にアメリカ、インドに続き日本は4位、スウェーデンは少し飛んで27位です。世界214カ国を対象にした統計であることを考えると、決して消費量が少ないとは言えません。さらに人口比率を考慮した場合、実は国民一人当たりの電力消費量が最も多い国の一つとして捉えられています。1960年から2018年までの電力消費量の調査において、スウェーデンは全ての年で10位以内に入っています。しかし環境問題に対して世界をリードするスウェーデンはこれまでどの国々よりも早くに、環境を第一に考えた経済成長を進める政策を率先して実行し、今では電力供給を行う上でCO2を排出しない電源が約8割を占めています。つまり人間活動が環境に与える負荷や資源の再生産、廃棄物浄化の面で、スウェーデンは賢く電力を生産し使用しており、世界で最もグリーンな国の一つと言えるのです。

スウェーデンは比較的低いレベルの二酸化炭素排出をこの数十年間保ってきましたが、これに留まらず2040年までに100%再生可能エネルギーによる発電を目指し、2045年には脱化石燃料を宣言しています。昨今グリーン産業の形成がより急速に進められており、環境に配慮したバイオ精製所が作られ、世界で初めて非化石燃料による鉄鋼製造の実現にも成功しました。二酸化炭素の実質排出量がゼロの状態=クライメートニュートラルなセメントの開発も進行中で、輸送網は電気化が進んでいます。



第二の都市ヨーテボリでは公共交通機関のバスやゴミ収集車にボルボの電気トラックが採用され空気汚染の削減に貢献している
クレジット:Sofia Sabel/imagebank.sweden.se



また、持続可能な都市計画も各自治体で行われており、例えば首都ストックホルムではトラムやバス、フェリーはバイオガスを使用し、市内に流入する車には税金を課して出来るだけ公共の交通機関を使うよう促しています。市の南に位置する居住地区ハンマルビーショースタッドでは電力供給、水供給、下水処理、ゴミ処理計画を持続可能性の基盤と位置づけ、同じ規模の都市と比較して、それらの環境負荷半減を目指すプロジェクトが進められています。家庭で分別されたゴミが街に設置された真空ゴミ収集ステーションに捨てられると、パイプを通って自動的に収集所に移動し、燃やして発電し熱を回収して、給湯や暖房のエネルギーとして利用されています。同地区のエネルギーの半分がこのシステムで賄われており、この取り組みは「ハンマルビー・モデル」と呼ばれ世界から注目されています。

そんなスウェーデンの中でも特に着目したいのが、南部スモーランド地方に位置する人口約94,000人(2020年3月時点)の街ヴェクショーです。1970年代に行われたヴェクショー湖の大規模復興工事を皮切りに、二酸化炭素の大気中排出量を2025年までに最低70%削減する目標を掲げています。そして今日ではヨーロッパ初の「Modern Wooden City(現代的な木の街)」という名の下に、新しい建造物の50%以上が再生可能な建材、つまり木材で建設されています。ヴェッレブロアーと呼ばれる象徴的な地区ではマンションはもちろんオフィス、学校、スポーツ競技場など、一つのエリアが全て木造建築で構成されているのです。コンクリートの代わりに木材を使用することで、二酸化炭素排出量の大幅な削減が期待されています。さらに屋根にはソーラーパネルが取り付けられ、タイマーに接続された低エネルギー電球を使った照明が採用され、断熱の強化と従来の暖房システムを一切使わないパッシブハウス(無暖房住宅)の建設も進んでいます。



構造材に木材を使用した4階建てのマンション。木材を使うことで他の建材よりも二酸化炭素排出量が大幅に削減される。
クレジット:Ida Gyulai/imagebank.sweden.se



その他、ヴェクショーの取り組みのほんの一部をここに上げてみます。


・サイクリングを気軽に楽しめるようサイクリングロードや自転車専用レーンの拡大を進め、自転車交通を増やす。


・車両測位システムを用いて、商業用トラックやタクシーなどの空運転の車両を減らし、輸送手段を最大限に利用する。


・様々な省エネ方法に関する情報やアドバイスを無料で提供する事務所の開設。


・共同住宅と保育所に適切な断熱と空気濾過から得た熱リサイクルシステムを備え、住民がリアルタイムでエネルギー消費量やコストなどを把握できる、個別の暖房・水道・電気料金メーターを設置。


・次世代燃料(代替燃料)を備える給油ステーションの配備やグリーン車両のための無料駐車場の導入。


・バイオガスを使用した市バスの運行。


・煙から出る灰をフィルターで集め肥料として再利用し、排熱を地中に埋めパイプ網を通じて暖房用に供給するなどの熱電併給システムの導入。


・解体された建物からリサイクルされたソーラーパネルを公共・民間の建物に再活用。


環境に配慮しながら市民の生活の質を改善するには、都市開発に対して統合的かつ全体的なアプローチが必要です。スウェーデンの取り組みはその点が考慮されており、物事を広く網羅して将来を見据えながら総合的に考えている点が特徴的と言えます。また100%再生可能エネルギーによる発電や脱化石燃料という目標はとてもハードルの高いものですが、その第一歩となるのは一人ひとりが「実現できる」という信念そのものであり、身近な問題であると捉えられています。そして国、地方自治体、企業、学校、個人が一体となり協力する必要があるとされています。そのためこれらの実例は授業の社会見学を通じ子供達の体験学習に活用され、算出された数字や統計などは専門家の分析や調査のために提供されています。さらに海外からの訪問客を受け入れることで、あらゆる情報を世界に向けて惜しみなく発信し共有しているのです。