持続可能な社会を形作るスウェーデンのイノベーション[前編] 2021/08/31

Stories of Sustainability vol.2

クレジット:Maskot/Folio/imagebank.sweden.se



スウェーデンなど北欧諸国をはじめ各国のサステナビリティな文化慣習や、取り組みをお伝えするのが「Stories of Sustainability」です。
未来を変えていくアクションやヒントをご紹介します。



この十数年で私たち日本人にとってスウェーデンは、以前にも増して身近な国になりました。多くのインテリアデザインやファストファッションが上陸し、現地の豊かなライフスタイルが紹介されることで、その関心はより一層高まりを見せています。

しかしそんなスウェーデンは実は昔から、日本人の身近な暮らしに寄り添う様々なものを生みだしてきた発明大国でもあるのです。それら新しいアイデアから新たな価値が生まれ、社会に大きな変化と革新のきかっけをもたらしてきたという意味で、イノベーションという言葉が今日のように注目される以前から、スウェーデンは革新的な国であったと言えます。誰でも耳にしたことがあるような商品やサービスが多く誕生し、世界中に広まっているのです。



ビデオ通話の元祖Skypeはスウェーデン人のニクラス・ゼンストロームとデンマーク人のヤヌス・フリスによって考案された
クレジット:Lena Granefelt/imagebank.sweden.se



発明大国からイノベーション大国へ



ビデオ通話の元祖Skype(スカイプ)や音楽ストリーミングサービスを提供するSpotify(スポティファイ)は新しいサービスを発明し、イノベーションを起こした北欧企業として知られていますが、スウェーデンの交通安全への取り組みも革新の一つと言えるでしょう。



今や車の全席に着用が義務付けされているシートベルトですが、1959年にこの3点式を発明し実用化に成功させたのはボルボのエンジニア ニルス・ボーリンでした。特許を取得したものの、安全は全ての人が享受すべきとしてボルボはこれを開放し、3点式シートベルトが広まっていきました。
(写真)ボルボのエンジニア、ニルス・ボーリンは、PV544に初めて搭載された3点式シートベルトの開発者



スウェーデンを発明大国と知らしめた著名人といえばアルフレッド・ノーベルが挙げられます。毎年12月10日に開催されるノーベル賞は日本でも話題です。アルフレッドがパリで有名な科学者の研究室で学んでいた頃、高い爆発性を持つ液体ニトログリセリンを発明したイタリアの科学者アスカニオ・ソブレロに出会い、これを機にこの液体を使った爆発物の研究に取り組みはじめました。実験中に弟を含む数人の犠牲者を出し、ストックホルム市から市内での研究打ち止めを言い渡され、悲しい経験をしたアルフレッドですが、それでも諦めずに挑戦し続けました。そして1866年に実験は成功し、ダイナマイトが誕生したのです。実はスウェーデンは17億年前にできた一枚岩の上にあり、ダイナマイトなくしてインフラの整備を進めることは困難なことでした。この発明によってスウェーデンの街づくりが急速に進んだことは言うまでもありません。1896年12月10日、アルフレッドはイタリアのサン・レモで亡くなりました。最後の意志と証言で、自分の財産の大部分を、人類のために最善を尽くした人々に提供してほしいと遺言を残しました。

また、今や当たり前に思われる牛乳やジュースなどの紙容器テトラパックもスウェーデンで生まれた産物です。当時使われていたあまり実用的とは言えないガラス瓶に代わり、1946年に最初のモデルとして考案されたのが、牛乳を空気に触れずに注入して梱包できる、衛生的で運搬にも便利な四面体紙容器でした。

最近ではあまり使われなくなった安全マッチもその一つです。当時すでに世にあった黄燐マッチはちょっとした摩擦や低温度で発火したり、黄燐の持つ毒性によって労働者の健康被害をもたらすなど大きな社会問題に発展していました。そこで赤燐を基にして発火剤と燃焼剤を分離させた、今日も流通する安全マッチが考案されたのです。

ペースメーカーの開発に大きく貢献した一人はスウェーデン人のルーネ・エルムクヴィストです。それまでにあったペースメーカーは体外式でしたが、ルーネの偉業によって、1958年に初めて体内植込み式のものが誕生しました。現在ペースメーカーの性能は著しく向上しており、小型化・軽量化され電池の寿命も延び、治療後はそれまでとほとんど変わらない生活を送ることが可能になりました。

このようにスウェーデンの発明はナラティブなモノづくりに起因しています。モノが生まれる背景があり、そこにある課題や問題に真摯に向き合いつつ、より良い状況や解決策が生まれるよう、人や環境に寄り添いながら社会に貢献することを根ざしてきたのです。そしてそれらが経済活動とも直結することで点と点が線となり革新へと発展して、持続可能な社会的構造が成立していると考えられます。従来、多くの企業が社会貢献を行なってはいても、それは経営や事業と切り離して捉えられていました。しかし今日において、それらは経済活動そのものに直結しています。スウェーデンはどこよりも早くこのことに気づき、社会的責任のもとで経済活動を進めてきました。持続可能な社会を目指す上で、スウェーデンの発明から学べることがたくさんありそうです。