スウェーデン流サステナビリティ・ジャーニーから、暮らしのヒントを学ぶ 2023/11/17



MEZASU[めざす]
ボルボが“めざす”のは、「人」を守り「人の未来」も守ること。人だけでなく、地球にもポジティブな未来のために、私たちが実践しているサステナビリティをご紹介します。



ボルボが生まれた国、スウェーデン。世界でもいち早く「サステナビリティ」を政策として掲げ、1996年には「1世代以内に持続可能な社会(環境・健康・経済の問題を解決する社会)」を実現することを目標に定めました。スウェーデンの人々のサステナブルな暮らしとはどのようなものなのでしょうか?10月にVolvo Studio Tokyoで開催されたサステナビリティイベント“For Life”では、スウェーデンのサステナビリティについて深い知見を持つ株式会社ワンプラネット・カフェのエクベリご夫妻をお招きしました。



数字で学ぶサステナビリティ先進国スウェーデン。



2023年10月のサステナビリティイベント”For Life”では、Sustainable for Lifeでもおなじみのエクベリ聡子・ペオご夫妻(株式会社One Planet Café)にご登壇いただきました。
ペオさんの生まれたスウェーデンは、日本の1.2倍の広さの国土にもかかわらず人口は約1/12。国土の半分以上は森林という環境の中で、SDGs達成度・イノベーション指数・男女平等度・国民の幸福度・高齢者の生活の質。数々の国際ランキングにおいて、常にトップクラスの水準を誇っています。 それはなぜか…。

お二人に「スウェーデン流サステナビリティ・ジャーニー 〜人・社会・環境に配慮した、これからの発展とは〜」と題して、サステナビリティの基礎知識やスウェーデンの暮らしやビジネス、まちづくりについてお話しいただきました。



「スウェーデンのサステナビリティを知る旅に出発します!」との掛け声で講演がスタート。イベント参加者は、どんなお話しが始まるのかワクワクした様子で耳を傾けた。



ペオさん「スウェーデンでは、サステナビリティを数値化し、把握することがとても重要視されています。計測することなしにサステナビリティについて考えるのは、『体重を測らずにダイエットをする』のと同じこと。みなさんもこれからは、数値に目を向けることをぜひ意識してみてください」

まずは、数字でスウェーデンのサステナビリティの現状を見ていきます。

スウェーデンの家庭ゴミのリサイクル率は50%。また、CO₂排出量は1990年から近年まで35%の削減に成功しました。日本の一人あたりのCO₂排出量は年間8トンであるのに対し、スウェーデンは3.5トンであることからも取り組みの成果が伺えます。また、大企業の役員の36%は女性が占めており、経済成長率は2〜3%で推移し、コロナ禍にも関わらず2021年には5%に達しています。このことからも環境に配慮するだけでなく、社会・経済の発展にも真剣に取り組んできた姿勢が伺えます。





聡子さん「環境負荷とともに、経済が成長していくというのが一般的な考え方です。ですが、スウェーデンはその関係を切り離し、経済成長をしつつ、ゴミやCO₂を減らし環境負荷を下げることに成功しています。このことを『デカップリング』と言います」

ペオさん「これから、サステナビリティを考えるときに『デカップリング』という言葉がキーワードになります。必ず覚えて帰ってくださいね」



国際約束を守り、環境循環を意識する。具体的事例から学ぶスウェーデン流サステナビリティ



スウェーデンは50年も前からサステナビリティに関する国際会議で決まったガイドラインに沿って、それを実行・実践してきました。
みなさんご存知の「SDGs」が採決される何十年も前から、スウェーデンではサステナビリティに対して取り組まれてきたのです。



左:SDGsの17のゴール(国際目標)の下に169のターゲット(具体的な目標)が示されたポスター。右:SDGsの17のゴールを綴ったポスター。これらは2030年から逆算して順を追って達成できるように構成されている。



サステナビリティの3つの柱「環境・社会・経済」が共存する社会をめざすため、SDGsでは、2030年までに達成すべき17のゴール(取組分野)と169のターゲット(具体的な目標)から成り立っています。169のターゲットに取り組むことで、17のゴールが達成できるのです。

例えば、SDGsの目標7で掲げられている「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に対するターゲット7-2「世界の再生可能エネルギーを増やす」において、スウェーデンでは、新車の半分はEV(電気自動車)か、充電機能を備えたハイブリッドカーであるため、多くの駐車場には充電スタンドが完備されています。一部の駐車場では屋上にソーラーパネルを設置し、発電された電力を直接供給できるスタンドもあるとのこと。これは、スウェーデンにおいて化石燃料を使用しないという高い意識が広がっていることがわかります。

さらに、スウェーデンの学校や会社では、サステナビリティの原則を学ぶ場があります。そこでは、人間がつくる循環と、自然がつくる循環が教えられています。サステナビリティを実現する際に、わたしたちが特に意識すべきなのが、人間社会での資源循環だけでなく、自然界の中での循環(環境循環)も存在するということです。



スウェーデンでは環境循環について学ぶ機会が多くある。保育園では板にいろいろな素材を打ち付けて土に埋め、何が自然に戻るか、戻らないかを幼少期から学んでいる。



聡子さん「スウェーデンの人は『環境循環』という言葉が何を意味するのかをよく理解しています。それは、人間社会の資源の循環は、自然界の資源の循環の一部なのだということです。ですから『人間社会の資源はより自然に戻りやすいものを使用すること』、『再生可能な資源を選ぶこと』、『それが難しい場合には、リユースやリサイクルを通じてできるだけ長く使うこと』というアプローチがサーキュラーエコノミーの基本的な考え方として浸透しています」

ペオさん「例えば、ここに竹でできたペンがあります。プラスチックのペンは、分解されるまで約2000万年かかりますが、一方でこの竹のペンは、土に戻るまで約1年しかかかりません。資源が自然界に戻り再生するサイクルをできるだけ短くすることこそがサステナビリティの鍵です。どちらを選ぶのがよりサステナブルか、その選択肢は明らかになってきましたね」

そのほか、日常のサステナブルな選択を手助けする認証制度や、サステナビリティに関するエキサイティングな取り組み事例も紹介されました。



スウェーデンには、サステナブルな商品を第三者機関が証明した認証マークが約400種類ほどある。消費者が認証マークの意味を理解し、商品を選択する手助けとして、スーパーマーケットでは、認証マークの紹介コーナーが入口に設けられているなど、企業が消費者を教育する仕組みも多く存在する。



最後は、エクベリ夫妻が拠点を構えるスウェーデン第三の都市、マルメのサステナブルな街の動画を見て、サステナビリティジャーニーは終了しました。



ペオさんの出身地であるマルメは、サステナブルなまちづくりの世界的リーダーになることをめざしている。ウェスタンハーバー地区は重工業が盛んだった時代から生まれ変わり、現在は再生可能エネルギーの自給率100%を実現したことで有名。



その後、Q&Aのセッションが始まります。

聡子さん「スウェーデンでは『馬鹿な質問はない』とよく言われており、どんな質問もみなさんや私自身の気づきにもつながります。どうぞ何でも聞いてみてください!」

その呼びかけに応じて、客席から多くの手が挙がります。





「スウェーデンのように、みんなで一丸となりサステナビリティに取り組むために、どんな工夫がされているのでしょうか?」

聡子さん「スウェーデンでは、まずゴールや望む未来のイメージを共有することが重要視されています。そして、どんな意見であろうと徹底的に聞いてオープンに議論が行われています。幅広い視点を取り入れることが最終的な合意点を見つけることにつながっています」

ペオさん「インセンティブの導入も効果的なアプローチです。スウェーデンでは、空のペットボトルをリサイクルにするとお金がもらえる仕組みがあります。それでも効果がない場合は、法的な措置もとられることがあります。例えば、スウェーデンには100種類以上のゴミの分別をする必要がありますが、故意な誤りが長く続いた場合は処罰が課せられることもあります。こうした、一つひとつが人々の行動を変えるきっかけになっています」

最後にペオさんから一言。

「私が10代の頃、環境保護団体のリーダーとして活動していた時、『地球環境の悪化は企業のせいだ!』という反抗心を抱いていました。ある時、スウェーデンの企業が『弊社は環境を破壊している会社です。だからこそサステナビリティに取り組みます』という広告を出しました。この頃は、さほど環境問題を重視されていない時代です。とある自動車メーカーは、自動車が環境負荷を与えることを認め、環境政策声明を打ち出したのです。私は本当に衝撃を受け、考え方が変わりました。その企業こそがボルボであり、『企業も変わることができるのだ』ということに気づき、現在もポジティブな活動ができているのはボルボのおかげです。私たちも企業も一緒になって、世界が良い方向に向かえるように頑張りましょう。本当にありがとうございます。」と締めました。



フィーカとは、時間をかけてコーヒーを飲みながら、一人はもちろん、家族、友人、仕事仲間たちと心を開いて会話を楽しむことで円滑な関係を築く、スウェーデンでとても大切にされている文化のこと。コーヒーを楽しみながら交流を深めた。



トークイベント後はスウェーデン流「フィーカ」タイム。
甘いものをつまみながら、参加者のみなさんもそれぞれが興味のあることを直接お話されて楽しまれていました。
参加者からは、「自分の子どもにもスウェーデンの教育を実践してみたい」「近々ヨーロッパを訪れたいと考えていたが、スウェーデンに訪れようと思った」と語る姿もありました。

ボルボでは”For Life”と題したサステナビリティに関わるイベントを定期的に開催しています。興味がありましたら、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。ご来場を、⼼よりお待ちしております。