ボルボのサーキュラー・エコノミーを紐解く~グローバル・ヘッド、オウェイン・グリフィス氏が語るボルボのサステナビリティ戦略 2023/10/12



MEZASU[めざす]
ボルボが“めざす”のは、「人」を守り「人の未来」も守ること。人だけでなく、地球にもポジティブな未来のために、私たちが実践しているサステナビリティをご紹介します。



2023年9月のサステナビリティイベント“For Life”では、ボルボのグローバル・サステナビリティ戦略、サーキュラー・エコノミー(循環型社会)について現状と課題、次のステップについて、来日したボルボ・カーズのサーキュラー・エコノミー担当グローバル・ヘッドであるオウェイン・グリフィス氏が講演しました。その様子をお届けします。



循環型社会の実現はすべての企業の課題



2023年9月Volvo Studio Tokyoのサステナビリティイベント“For Life”では、100名を超えるお客様をお迎えして開催しました。今回のゲストは、ボルボのサーキュラー・エコノミー担当のグローバル・ヘッド、オウェイン・グリフィス氏でした。



イベントには100名を超える方が参加された。



なぜ、ボルボが“For Life”のイベントで、サーキュラー・エコノミー(循環型社会)に焦点をあてているか、サステナビリティのグローバル・リーダーをめざすボルボがこの活動を通して、サステナビリティへの強い想いと取り組みをお客様と共有し、ともに持続可能な未来を築くために何ができるかを考えていきたいとのメッセージからスタートしました。

ボルボではサステナビリティにおいて3つの目標を立てて取り組んでいます。
1.環境への影響を最小限にし、2040年までにクライメートニュートラルな企業になること。
2.車両、部品、素材のすべてにおいて資源効率を最大限に高め、2040年までに循環型ビジネスをめざすこと。
3.従業員やビジネスパートナーに対して常に正しい方法で接し、倫理的な事業を行うこと。

これら3つの中で、最も実現が困難だと言われているのが、「循環型ビジネス」の実現です。
気候変動や資源枯渇など様々な社会課題が深刻化するなか、企業がただ利益を追求するだけでなく、少ない資源の範囲内で利益を上げていくことを、どう解決していくのか。あらゆる企業に課せられた課題となっています。
これに対して、オウェイン氏からボルボのグローバル・サステナビリティ戦略について、分かりやすく紹介しました。



常に疑問を持ち、検証を繰り返すことで新たな解決策が見つかる



「サステナビリティは、ボルボにおいて最も重要な事項です。なぜなら、私たちの行動で猛暑、南極や北極の氷の減少、大気汚染など地球環境にたくさんの問題が起こっているからです。ボルボはその解決に向けて、長年取り組んできましたが、その行動はまだまだ十分ではなく、業界のリーダーとしてボルボはもっと大きなステップを踏んでいかなければいけないと考えています。
今日はボルボの現状と直面している課題、その解決に向けた戦略についてお話しします。プレゼンテーションのあとは、Q&Aセッションの時間をたっぷり設けています。疑問に思ったことはたくさん質問をして、ぜひ私にチャレンジしてください!」
と、会場のお客様に、オウェイン氏は、私たちの行動がどれだけ環境に負荷をかけているか、データをもとに話しました。





ボルボは自動車の製造だけでなく、その原料調達から車両が寿命を終えるまで、すべてのバリューチェーンにおいて出されるCO₂を減らす責任を担っており、2030年までには車両一台あたりのCO₂排出量を40%減らすことをめざしています。CO₂排出量削減へのボルボの対策の核となるのは、販売する車両のすべてを電気自動車(EV)へ切り替えるという目標です。そして工場やすべてのボルボの拠点でのクライメートニュートラルな電力への切り替えを進め、過去5年間では15%の削減に成功しています。
また倫理的で責任あるビジネスの実現に向けては、原料調達の段階など、サプライチェーン全体においてボルボが正しい方法で行動することはもちろん、従業員へ快適でサステナブルな職場環境を提供することも指しています。
ボルボの課題となっていることの原因へ対策を行なった現状の進捗は、数値で明確にしながら報告がされました。

現在、オウェイン氏が筆頭となって取り組んでいるのが、循環型ビジネスの実現です。
そのためには、材料・水・エネルギーなど有限な資源の使用を最小限に、廃棄物とあらゆる汚染を減らしながらビジネスを行わなくてはなりません。並行して、「企業の成長」と「製品を売ること」を切り離して考え、より少ない資源で収益を生み出す新しいビジネスモデルを模索しなければならないとオウェイン氏は語ります。

ボルボ車の製造時に使用されるリサイクル素材は材料全体の10%を占めており、2030年までには25%をめざします。また、事業活動における廃棄物はこの4年間で16%の削減に実現していますが、これではまだ充分とは言えず、これからも更なる取り組みを続けていく必要があります。

循環型ビジネスへの実現に向けて、自動車業界の抱える最も大きな課題の一つが、「私たちがこれまでつくってきた、寿命を迎えた車そのものの素材のリサイクルです。いわば1台約1.8トンもの質の高い資源なのです」とオウェイン氏は話します。
その新たなチャレンジも始まっています。EVの配線等にたくさん使われる銅のリサイクル実験がその一例として紹介しました。
銅は、CO₂を最も出す材料の一つですが、安全性に配慮し自動車業界でもリサイクルは難しいという考え方が一般的でした。「本当に銅のリサイクルは不可能なのか?」という疑問を起点にボルボは、パートナー企業と協力して新たな実験を行いました。寿命を迎えた車に使われた銅を新たな車両の銅ケーブルとして再生し、安全テストを行うというものです。その結果、再生銅は、新品同様の強度を保っていることが分かったそうです。
「今後は、再生銅の使用率を100%まで高め、業界全体でその動きを推し進めていきます。さらに様々な素材の再利用へのチャレンジを続けて、将来的には、再生資源から新しい車をつくることができると信じています」と挑戦への意欲を示しました。



ボルボ最新のEVモデルEX30



そして2023年、ボルボが取り組んできたサステナビリティを体現した最新のEVモデル「EX30」が完成しました。サプライチェーンで出されるCO₂を極限まで減らし、安全性はこれまで同様最高の品質を保ちつつ、リサイクル素材の使用量も従来に比べ大幅に増えています。「いま最もサステナビリティな車であり、小型で、高い性能のEX30は、私たちの誇りです。日本でのEV普及を加速させると期待しています」

「疑問をテストし、検証する。この過程を繰り返して、ボルボはサステナビリティの実現に取り組んできました。これまで、『リサイクルは不可能だ』と言われていた銅もこの方法によって新たな活路を見出しています。そのためにはユーザーやパートナー企業の皆さんの協力が必要です。皆さんもボルボについて何か疑問が生まれたら、どんどん私たちに質問を投げかけてください。きちんと一つひとつ検討をしていきます。皆さんの声がボルボの力になります」

と、オウェイン氏。お話しの終わりには、会場からは大きな拍手が湧き起こりました。





その後のQ&Aセッションでは、オウェイン氏の呼びかけに応えるように、イベント参加者から次々に質問が投げかけられました。

ボルボユーザーからの問いかけに、「素晴らしい質問をたくさんありがとうございます。今はまだ具体的な回答ができませんが、必ず解決する方法を考えることを約束します。また宿題が増えてしまいました。ボルボのサステナビリティの仕事に全力を尽くす者として、これからも頑張ります!」と力強く答えたオウェイン氏でした。



イベント終了後には、参加者と歓談されたオウェイン氏。



その後は、軽食を交えながらの交流会も開催。オウェイン氏と自動車業界の展望や未来の車のアイデアについて話したり、早速EX30に触れ、ボルボのサステナビリティを体感するなど、参加者それぞれがサステナビリティを考える時間となりました。



Volvo Studio Tokyoでは、最新EVモデルのEX30の実車に一早くに触れることができる。






オウェイン氏からのメッセージ

“For Life”イベントのプレゼンテーションを終えた、オウェイン氏からのメッセージをご紹介します。

ボルボにとって、日本のお客様、保険会社、メディアなど、サステナビリティに感心の高い方々と話す素晴らしい一日でした。100名以上の方々を前にプレゼンテーションができました。そして素晴らしい出会いもありました。総走行距離55万kmの1997年製ボルボ車で、仙台からイベントに参加いただいた紳士とお話する機会を得ました。これは、ボルボ車の優れた耐久性のエピソードです。