ボルボの「サステナビリティ・コーディネーター」の仕事とは? 2023/06/22



MEZASU[めざす]
ボルボが“めざす”のは、「人」を守り「人の未来」も守ること。人だけでなく、地球にもポジティブな未来のために、私たちが実践しているサステナビリティをご紹介します。



ボルボ・カー・ジャパンでは、2022年から会社全体のサステナビリティを更に推進するための専任のサステナビリティ・コーディネーターが着任し、社内外での取り組みを精力的に進めています。サステナビリティ・コーディネーターのニコ・ミラ氏に、ボルボ・カー・ジャパンの取り組みについて、またその仕事への想いについて尋ねました。



ボルボ・カー・ジャパン株式会社 サステナビリティ責任者&PMO /ニコ・ミラ

1994年、スウェーデン生まれ。スウェーデン・ウプサラ大学政治学部卒、上智大学グローバル・スタディーズ修士課程修了。2022年3月、ボルボ・カー・ジャパンにサステナビリティ・コーディネーターとして入社。入社前には、地球環境戦略研究機関にて、アジア太平洋地域におけるSDGsのガバナンスと進捗に関する研究に従事。



自分のルーツから社会課題に目覚めた私が、ボルボの仕事に就くまで



—— まず、スウェーデン出身のニコさんが来日し、ボルボでサステナビリティ推進の仕事に就くまでの経緯について教えてください。

私は、スウェーデン南部スモーランド地方の人口400人ほどの小さな田舎町で生まれました。家の裏庭の奥には森があり、シカやキツネ、時にはヘラジカなどの野生動物を見かけるようなところです。そんな豊かな自然に囲まれた環境で育ちました。スウェーデンでは、短い夏を楽しむために、自然のなかでのアクティビティをするのが主流なんですが、私も、幼いころから湖で泳いだりサッカーをしたり、自然のなかで遊ぶのが大好きでしたね。

私はスウェーデンで生まれ育ちましたが、母はスウェーデン人で父はフィリピン人です。両国の文化に触れながら育った私は幼いながらに「生まれ育った場所によって人生は大きく変わる」ということを肌で感じていました。そして、国の差異というものを不思議に感じ、様々な社会課題に関心を持つようになりました。

もっと社会課題について深く学びたいと思いスウェーデンの大学では、政治学を専攻しました。そんななか、交換留学生として来日する機会を得ました。ちょうどパリ協定が採択された直後の2016年で、世の中では気候変動問題についての関心が高まっていた頃でした。日本の大学では、地球規模の社会課題のなかでもサステナビリティと気候変動について学ぶことができました。在学中、研究機関で1年ほどSDGsのガバナンスに関する研究に携わりました。

そして、ボルボがサステナビリティ担当者を募集していると知りました。ちょうどその時期に「気候変動こそが究極の安全テストである」("Climate change is the ultimate safety test")というCMを見て、「安全性」を追求するなかでサステナビリティについても本気で取り組むボルボの姿勢や意気込みに共感して、私もボルボの一員として携わりたいと思いました。

日本は世界のなかでもCO2排出量の多い国です。自動車という温室効果ガス排出量の大きい分野で、その削減に成功すれば、気候変動問題にも大きく貢献できるのではないかと考えているからです。



人類が直面する気候変動問題を究極的な安全性の課題として示した、ボルボのTVCM「ボルボ究極の安全テスト」。



ボルボ・カー・ジャパンにサステナビリティ・コーディネーターが必要な理由



——「サステナビリティ・コーディネーター」の仕事について聞かせてください。

気候変動は今も進んでいて、一人ひとりが責任をもって行動することが重要です。同じくボルボも、モビリティを提供する企業の責任として、これまで以上に取り組む必要があります。今、ボルボは「2040年までにクライメートニュートラルを実現する」というグローバル目標に向かっています。
この目標を世界中の国で達成するために、各拠点ごとに目標を設定し、行動をしているところです。

日本では「2025年までにCO2排出量を2021年と比べて50%削減する」という戦略的な目標があります。50%削減という高い目標のために、様々なプロジェクトや活動を進めています。

なかでも大きな取り組みが「クライメートニュートラルな電気の使用」です。
日本の事業活動にともなうCO2の排出量を計測したところ、販売店の電力利用による排出が全体の約30%を占めていました。そこで、全国126か所の販売店で、CO2を実質的に出さない「クライメートニュートラルな電気」への切り替えに力を入れることにしました。店舗へインセンティブを導入したこともあり、5か月前には0%だった利用店舗が、2023年4月現在では60%にまで増加し、年内には全店舗の切り替えが達成する見込みです。





そしてこの目標達成には、これだけでは不十分です。組織全体で取り組んでいく必要があります。
そのため、日本市場での独自目標を正しく設定し、サステナブルな取り組みを推進するために私が、「サステナビリティ・コーディネーター」として任命されました。

コーディネーターとしての役割は、1)ボルボ・カー・ジャパンの取り組みがグローバルの指針に合っているか常に確認し、2)社内の各部署や販売店と連携して、3)サステナビリティに関するプロジェクトや活動をリードすることです。



サステナビリティは、組織体制が整ってこそ実現できる



—— サステナブルな取り組みを推し進めるための組織体制とは、どのようなものでしょうか。

サステナビリティとは、組織全体の課題であり、それを解決するためには一人ひとりの行動が非常に重要です。そのためには、組織の体制づくりは欠かせません。

ボルボ・カー・ジャパン本社では、サステナビリティ・コーディネーターを務める私を中心に、CO2削減など、サステナビリティに関するプロジェクトを進めています。各部署にサステナビリティ担当者を配置し、異なる部署間を横断するチームを編成して取り組んでいます。私は、社長と密に連携しながらプロジェクトを進めているため、迅速な取り組みができています。また、様々なプロジェクトを同時に進行するには、誰が中心となって進めているのかを明確にすることが重要で、物事を確実に進めていくうえでも大切です。

各販売店にも、一人以上のサステナビリティ担当者を配置し、各店舗ごとのサステナビリティに関するデータ収集や取り組みを推進する活動をしています。





もうひとつ、組織全体で取り組むために、社員に対する教育・研修も大変重要です。参加者からの質問やディスカッションも活発で、お互いの理解が深まり、共感をもって受け止められている様子に手応えを感じています。



日本の「もったいない」文化や「わびさび」の伝統



——日本のサステナビリティについて感じていることを聞かせてください。

スウェーデンでは、学校教育のなかでも環境やサステナビリティについて学ぶ機会が多くあります。しかし日本では、サステナビリティという言葉は浸透していますが、概念や理解については、まだまだこれからだと感じる部分が多く見受けられます。サステナビリティに関わる重要なメッセージを伝えるためには、日本の皆さんに共感をもって受け止めてもらえる、関心や行動につながるコミュニケーションが大切だと考えています。

ただ私は、日本には既に、サステナブルな文化や自然に対する理解があると感じています。例えば、「もったいない」という言葉が示すことや、自然の美や四季の移ろいを大切にする「わびさび」もそうです。また、江戸時代は、鎖国により資源の輸入が難しかったことから植物や自然のエネルギーの活用が浸透し、衣食住においてもリサイクル文化が自然と定着していた循環型の社会でした。日本に昔からある文化や歴史のなかに、現代のサステナビリティを実現するヒントが詰まっているということを伝えることも、私がこれから取り組んでいきたいことでもあります。





日本の自動車産業は、世界のなかでも、また特にアジア圏においても大きな影響力を持っています。ボルボが、日本のサステナビリティを推し進め、リーダーシップを発揮していくために、一緒に取り組むことができるのは私にとって素晴らしいチャンスであり、冒険です。そのために最善を尽くすことに大きなやりがいを感じています。真摯に全力で取り組みながら、この道のりを楽しみたいですね。